なんのためにもならない話

タイトル通りです。

トルコ行進曲。その1

 初めての経験はいつも刺激的です。

 

同じ国へ何度か訪れると、慣れによって視界が広がり新しいことに気が付くことがありますが、初めて訪れる国での経験はまた格別に刺激的です。

 

そういう意味で、初めて訪れる国に行く時は、事前に治安や、政治の情勢、そしてどのような宗教が一般的なのかということをインターネットで最低限調べた上で計画をたてます。

 

学生時代に仏教の歴史や思想、宗学について学んでいて、同時にイスラム教の講義を選択して受講していました。何が好きでかは憶えておりませんが、単位取得後も同じ講義を聞きに2年行っておりました。

 

私のイスラム教との出会いは幼少期に、お寺を出入りする石材業者で働いていた中東出身のある男性との出会いです。彼は仕事の合間いつも私とキャッチボールをしてくれて、一緒に過ごす時間が増えるにつれ色んなことを教えてくれました。母国のこと、家族のこと、そしてイスラム教と仏教のことを。

その後すぐに彼は母国に帰ってしまい、彼とはそれっきりになってしまいましたが、幼心に私の記憶に残る出会いでした。

モスハさん元気にしてるかな〜。

 

 

でもそれが当時の興味に繋がったのかもしれません。

 

講義のおかげで無駄に?コーカサス地域のことなどに詳しくなり(この後の人生でコーカサス地域出身の友人ができたので結果的に無駄などなかったのですが)

教授に相談すると、旅のしやすさから🇹🇷トルコへの旅を勧められました。

 

この時も、高校時代からの夢でもあったアヤ=ソフィア大聖堂を見たいとの思いから、トルコはイスタンブール行きを計画しました。

 

 

 当時は今のように新しいターミナルではなかったドーハ空港で乗り継ぎのために長い時間を過ごしました。Pray Room(礼拝室)という当時の日本ではまだ見慣れない部屋があり、電光掲示板にはアラビア文字が並び、多くの女性がベールやヒジャーヴを被着した姿でおりました。

日本ではそれまでほとんど見たことない様子でしたので、長いトランジットの間もその景色を目に焼き付けまいと、休むことなく人の行き交いを眺めておりました。

 

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ドーハ空港内

 ドーハを発つとその便に乗り合わせた東洋人は私と友人の2人だけでした。客室乗務員に韓国人の女性がいて、その女性に韓国人かと尋ねられました。「イルボンサライムニダ(日本人です)」その返答に少し残念そうな顔をしました。

でも、その女性はハングルで返答したことで喜んでくれ、また人の行き交いの少ない路線では、こうして同じ国出身ではなくても、顔が似ている中国人、韓国人、日本人と会うことはホッとする感覚もあるのだと知りました。

この後アジア以外の遠い地に出向いた時に、何度も似たような経験をしましたが、これが初めて感じた時でもありました。

 

 

窓の下にはアラビア半島が広がっていました。

 

遠くへ来たという思いや、勉強していたイスラム教の中心世界、宗教、文明、天然資源、戦争。それらの舞台となったアラビア半島の上空にいることに1人でちょっと感動しておりました。

 

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窓の下に広がるアラビア半島

そんな時間も束の間、周囲の座席の子供たちの賑やかさに面食らい、大学の教授に聞いていた通りだーって感動しました。

教授からは、子供たちは本当に天真爛漫に育てられ、騒ぎ、駄々をこね、日本だったらうるさいってくらい賑やかだと聞いておりました。その後、学校へ通うようになり、怖い先生に叱られ、甘やかされて育ったのは私だけではないと知り挫折を味わい大人になっていくって話でした。これはあくまで、教授が学生時代にホームステイしていたお宅の周りの話とはいえ、音楽を聞くため着けたイヤホンから流れる音より大きな声で騒いでいる子供たちの姿を見たら、あながち間違っていないと感じるものです。そして、文化の違いだと自分に言い聞かせると、煩わしく感じることもありませんでした。

 

また、機内で提供された食事の味付けの、日本のものとの違いにも驚きました。正直すごい不味く感じました。周りを見ると平然と口に運んでいるので、私たちは「あ、きっと食べ方を間違えたのだろう」と思い、隣の席の青年に思い切って尋ねました。

「これはなんですか?どうやって食べますか?」と。

すると、思っていたものでしたし、食べ方も思っていた通りでした。

そして青年が続けます。

「これ、不味いよね?」って。

 

思わず笑ってしまいました。

 

私たちを乗せた飛行機はイスタンブールを目指します。

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アラビア語で書かれた電光掲示

 

初海外

私の初海外は大学1年生の終わり、冬休みのことでした。

宗門の大学に通い、その中でも宗門の僧侶の徒弟しかいない特殊な学生寮で1年間過ごしました。

修行道場の様に坐禅をし、読経をし、作務という掃除があり、親元を離れて暮らす大学生活でも、また違った厳しさのある1年間を過ごしました。

とは言え当時大学生ですから、仲良くなった寮の友人たちと長期休暇にはあんなところ行ってみたいという話で盛り上がり、フランス旅行を計画しました。

 

私にとってはこれが初めての海外旅行でした。

初海外なので、旅行代理店の用意したプランの中から、とは言え学生だった私たちが選んだのは一番安い終日フリーの宿も安価なプランでした。

 

これが良かったのだと思います。(もしかしたら悪かった?)

初めてのパリは、思っていたより街並みはずっと美しかった、けれど足下はゴミや犬の糞で汚れておりました。

通りにはサハラ以南から来た黒人やスカーフを被った女性が物乞いをしておりました。

泊まっていたのは安宿だったこともあり、パリの中心地から離れたところにありました。宿の目の前の通りはゴミだらけで、夜中も外から人が揉める声が聞こえ、救急車のサイレン音を一晩中聞いていた様な気がします。

地下鉄では子供たちが線路に靴を投げ捨て走り回り、セーヌ川を渡る区間には車両内でバイオリンを演奏するものがいて、街中には門番がいる高級ブランドショップがあるのです。色んな姿がある。これがパリなのかぁ。

日本しか知らなかった私には全てが新鮮で、それでいてテレビの中でしか知らなかったパリと比べ、思っていたよりも実際はつまらない街に感じておりました。

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エッフェル塔から眺めるモンマルトルの丘

 

勝手にパリにユートピアの様な幻想を抱いていた私は、頭の中が混乱し言葉にならない思いが交錯していました。

そんな中で訪れたのが、サクレ=クール寺院でした。映画アメリでも度々出てくる、モンマルトルの丘でも有名なこの寺院を訪れた時、そこではちょうどミサが執り行われておりました。観光客は脱帽、静寂を約束し参拝が認められていたのですが、その式中にお香の入った籠を聖職者達が左右に降る光景がありました。そして、跪き両手をクロスさせ祈る人たちの姿が目に写りました。

 

パリという街に幻想を抱いていた私ですが、その真実を目にした時に色んな葛藤が生じました。そしてそれは、きっとパリに暮らす人々にとっては当たり前で、そしてこの街にはもっと多くの葛藤があるのだと感じました。

どんな人たちが、どんな生活を送っているのか。そこに大きく宗教が関係しているからこそ、『宗教とはなんだろうか』と考える時に、宗教側からだけでは見えづらいものがあります。だからこそ、そこにある生活を見ることで宗教が見えてくるのだと感じます。きっとこの生活と宗教は切っても切り離せるものではなく、だからこそどちらか一方から見ることは出来ないのです。

日本で暮らしておりますと、"宗教"という語のイメージが一般的にあまり良いものではなく、それゆえに私は"無宗教"だ、という方も多くおられます。

信仰する宗教を持たないことは各個人の問題なので勝手ですが、"無宗教"という宗教の広まりを感じています。それはいわゆる伝統宗教が『存在』について語ってきた叡智を学ぼうとしないという姿勢でもあります。

(仏教の側から見ると、「生まれ、老い、病に伏し、死んでいく」という、生老病死の問題を明らかにしようとせずに苦しむ姿を見ると、無宗教という宗教は大変だなぁと思うわけですが。)

 

話を戻すと、先の語のイメージでわかりづらくなってしまった"宗教とはなんだろうか"という素朴な疑問を当時の私は抱いておりました。

宗教者として片足を突っ込んだ状態だった学生時代に、このまま『宗教とは』、とか、『お釈迦様がどんなことを語られて、それはなんで語られたのか』ということを、ただなんとなく、『このように辞書に載っているからこうだ』、ということだけを人には説くことはできないし、ましてや自分が一番納得いかないと思うようになりました。

簡単に言えば、自分が納得していない、自分に決着がついていないことを、人に良いと伝えることは詐欺だと感じたのでした。でも、学べば学ぶほどに感動すら覚えたのが私には仏教であったので、今僧侶として暮らしている訳であり、もしかしたらこうして文章として記しておくことで、同じように何か疑問に感じて生きている方のきっかけになったらと思います。

これがブログを始めたきっかけであり、初めての海外旅行にして感じ、今なお旅に出ている原動力となっています。

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サクレ=クール寺院内の様子

 

はじめまして

はじめまして

 

ブログはじめました

てつと申します。

 

これまで、旅をしてきた様子をインスタグラムなどで投稿していたのですが、

どうしても紹介する際に断片的になってしまい、また投稿する時節に影響されてしまうので、

こちらで、流れでもってそれらの旅の様子をゆるーく紹介したくはじめました。

また、紹介にも書いたのですが、田舎寺で副住職をしているので、そちらの様子もぬるーく書いてゆこうと思います。

 

合掌!

 

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